生きるために必要な力ってなに?
フューチャースキルの先にある「共生力」
新しい時代を、自分らしく生きるために
今まさに、社会は新時代へと突入しています。
取り巻く環境は、私たち親世代が子どものころとは大きく変わり、今なお、めまぐるしく変化し続けています。グローバル化・情報化により、コミュニケーション量は激増。それぞれの価値観にあった生き方が選択できる、多様性が尊重される時代となりました。
年齢・性別・国籍あらゆるカテゴリーがフラットな時代。それは同時に、今回のコロナ禍のような世界規模での不測の事態が起こりえるということです。
不安定で、不確実で、複雑で、あいまい――それぞれの英語の頭文字をとり、VUCA(ブーカ)と呼ばれる現代。この言葉が示すように、社会環境はますます複雑化し、将来の予測が困難な状況となっています。
多様性自体がデフォルトとなった、そんな新しい時代を切り拓いていく主役、それが、これからの子どもたちです。
『難しい時代にあっても、自分の人生を自由にデザインし、自分らしく、いきいきと生きてほしい!』
そのために私たち大人ができることは何か――まずは私たち大人が新しい価値観で考えてみませんか?
多様性を味方につける
子どもの将来を考えれば、学力を伸ばすこと、知識を身につけることが一番。確かにそうです。生きていくには大切なこと。ただ、それだけでは“自分らしく”生きてはいけないのがこれからの時代です。
VUCA時代は、「多様性」が武器になるといわれています。
変化の激しい日常、技術革新のスピードは年々加速しています。当たり前だったことが突然変わったり、これまでの考え方がまったく通用しなくなったり。各分野の専門性はますます深まり、同時に幅広い知見が求められます。深く、広く、果てしない。とてもじゃないけど、一人では追いつけない。
ではどうすればいいのでしょうか。
発想を変えてみましょう。「共創」です。
「あれも学ばなきゃ、この知識も習得しなきゃ・・・」どれほど有能なスキルを持っている個人だったとしても、新しい時代においては、できることに限りがあります。自分ひとりのキャパシティの中で限界を感じるのではなく、それぞれのもつ能力・考え方・経験を生かして役割を分担。チームで創るという発想に切り替えるのです。
チームだからこそ、パフォーマンスを最大化できる。仲間や社会に“自分らしく”貢献できるのです。
自分と違う特性・自分と違う考え方の人たちと一緒になって成し遂げる。これこそが、多様性を味方につけるということ。VUCA時代を生き抜く最善の方法といえます。
世の中には自分とは違う考え方、生き方をしている人がたくさんいます。それは今も昔も変わりません。しかし、世界があらゆる意味でフラットになりつつある今、そういう人たちと“共に”社会で生きていく必要がある。考え方の違う人たちと衝突するのではなく、スルーするのでもなく、お互いの特性を寄せ合い“共創”できてこそ、予測不能な困難を乗り越えていけるのです。
そうはいっても、自分と違う価値観をもつ人との関係性を築くことはとても難しい。「すべての悩みは対人関係の悩みである」という心理学者アドラーの言葉にも表れています。簡単なこと、大人になれば自然とできることでないことは、私たち大人が一番よく分かっているはずです。
だからこそ、子どもたちには、共創のための準備と経験が必要です。
フューチャースキルとは?
では、どんな準備と経験が必要でしょう?
単にコミュニケーション力を磨けば、「価値観の違う人たちと共創できる力」が身につくんでしょうか? いえ、そう簡単ではないようです。
良い人間関係を築くには、コミュニケーション力は欠かせませんが、ここで求められるのはもう少し総合的な力、「フューチャースキル」です。「生きる力」「社会力」「21世紀型スキル」といった言葉とともに、耳にしたことのある親御さんも多いのではないでしょうか。IQや偏差値のように数字で測ることのできる「認知能力」に対して、子どもの人生を豊かにする能力「非認知能力」(ノーベル賞学者 ジェームズ・J・ヘックマン氏提唱)としても注目を集めています。
フューチャースキルに挙げられるものは数多くありますが、主なものはこちらです。
主体性・自己管理能力・コミュニケーション力・探究心・創造性・問題解決力・協調性・共感性等。 フューチャースキルはそういった力を総合した、心の土台となる「人間力」を指します。土台が安定しているからこそ、何事においても継続的に成長していけるということが分かっています。日本の教育現場においても2020年度から小学校での新学習指導要領がスタートし、世界基準の人材育成に向け、「生きる力」を育てる教育へと進化しています。
このように、子どもたちがそれぞれの枝葉を伸ばし大きく成長するには、いかにしっかりとした土壌ができているかが大きなポイントといえます。
生きていくには学力・知識ももちろん大切です。親として子どもの将来を考えれば、数値として目に見えるものの方が安心しますし、子どもたちも手応えを感じやすい。でもこれからの時代、それだけでは不十分。フューチャースキル=「人間力」と、従来のスキル=「学力」、この双方が必要です。
また、この二つの力はこれまで別々に考えられがちでしたが、実は深い関係が。二つの力は互いに作用しあって連鎖的に成長するといわれています。
たとえば、学習に探求心を持って粘り強く取り組めば、自然と物事とじっくり向き合えるようになり、そこには創意工夫が生まれます。そうすることで得た達成感や充実感から、さらに前向きな気持ちが生まれ、「人間力」も共に成長していく。自己肯定感やモチベーションが高まるのです。あちらが育てばこちらも育つ、互いにいい刺激を受けあいながら、共に成長していく、まさにプラスのスパイラル効果。心と体がつながっているように、目に見えない「人間力」と目に見える「学力」はつながりあっているのです。
「人間力」を土台に、「学力」を身につける。土壌が豊かであればあるほど木々はぐんぐん成長する。 だからこそ、私たち子どもの創作音楽劇団 わぉ!では、この「人間力」を育む環境をつくり、しっかりとその成長を観察し、サポートしていくことが、大人の重要な役目だと考えています。
対話創作プログラムで【共生力】を育む
わぉ!では、「価値観の違う人たちと共創できる力」、つまり、フューチャースキルから培われる、多様性の中にあっても互いを認めあい、助けあい、自分らしくのびやかに生きていける力を総称して【共生力】と呼んでいます。 その字の通り、社会の中で、自分以外の人と共に生きていく力です。そのためには、もちつ、もたれつの関係を築くことが欠かせません。「もちつ」が先にあるところがポイントです。自身の特性を生かして、誰かの役に立つ。一緒に新しい創造をする。それには自分自身がまず自立している必要があります。ここでいう自立とは経済的自立などではなく、心が自立しているということ。他の誰かまかせにするのではなく、今の自分に向き合う、自分のできることに誠実に取り組むということです。
わぉ!の対話創作プログラム活動を通して、子どもたちは自分の得意分野や能力を見つけます。自分らしくあることに自信を持てた子どもたちは自立していきます。自立した個人同士だからこそ、信頼し合い、互いに助け合える=相互依存の関係性を築くことができるようになっていきます。その力こそが【共生力】です。
年齢も性別も地域も学校も家庭環境も好き嫌いも、考え方だってそれぞれ違う子どもたちが集って取り組む「対話創作プログラム」。わぉ!では、そういったプログラムを通して、子どもたち自身が自ら【共生力】を育むきっかけと経験を提供しています。